ここで使えよあの道具


「ドラえもんは道具をきちんと使いこなせていないのではないか」
このような疑問を抱いた経験のある方は少なくないだろう。
「あの道具を使えば解決なのに……!」
大長編などでピンチに際し、「どうしようー!」とパニック状態に陥るドラえもん達を見て、
歯がゆい思いをした方も多いだろう。

しかしドラえもんとて、毎度失敗を繰り返しているわけではない。
再び同様の危機に陥った時に備え、解決策を考え出しているのだ。

次に挙げるのは、そのほんの一例である。

【広くて迷路のような家に憧れたのび太は、ドラえもんに相談。
ひみつ道具「ホームメイロ」で野比家を迷路にして遊ぼうとするが、のび太のミスで家はとんでもない大迷宮に。
家を元に戻すには、「ホームメイロ」のあるのび太の部屋へ辿り着かなくてはならないが……。】
(「ホームメイロ」単行本18巻/79年「小学五年生」1月号)

 小学生のころの私は「どこでもドア」でのび太の部屋へジャンプすれば万事解決だと考えたが、実は大きな落とし穴があった。
大長編『のび太の恐竜』によれば、「どこでもドア」は、あらかじめ地図情報を記憶させておかなければ上手く動作しないらしいのだ。
偶然出来てしまった大迷宮の見取り図などインプットされているわけもなく、この方法は今回は有効ではない。
それではどのような解決策が考えられるか。

実は「ホームメイロ」には後日談がある。8ヶ月後に発表された「お化けツヅラ」である。

【子供だましのお化け屋敷で腰を抜かしてしまったのび太。
バカにしたみんなを怖がらせてやるため、「お化けツヅラ」と「ホームメイロ」で家をお化け屋敷に改造。
自身は「化けよけスプレー」「通り抜けフープ」で完全装備して肝試しに参加するが、お化けの安全装置が故障してしまい……。】
(単行本プラス3巻/79年「小学四年生」9月号)

 迷子になったら大変と心配するのび太に、ドラえもんは「通り抜けフープ」があれば迷路なんか問題ではないと励ます。
そのやりとりは非常にスムーズで、ドラえもんがこれ以前に迷路対策を練り上げていたことは明白である

ドラえもんは8ヶ月の間に、再び同じ過ちを繰り返さないためにも、しっかりと解決策を考えていたのである。
一見、毎回毎回失敗しているかのようなドラえもんだが、よくよく観察してみると、着実に進歩していることは間違いない

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